5. 具体的な業務例(文書作成プロジェクトでの利用シナリオ)

ここで、ファイル管理と履歴管理の基礎を押さえたところで、具体的な業務への応用例を見てみましょう。
「社内報記事の作成プロジェクト」を例に、GitHubリポジトリをどのように活用できるかシナリオを紹介します。

シナリオ: 社内報プロジェクト

プロジェクト概要

4人のメンバーで毎月社内報を発行している。記事執筆担当、校正担当、画像担当、編集長がいる。これまではWord文書をメールで回して校正・修正していたが、コミュニケーションの手間と版ズレが課題だった。そこでGitHubで管理してみることにした。

リポジトリセットアップ

編集長がGitHub上に「company-newsletter」というリポジトリを作成。プライベートリポジトリに4人全員を招待し(第4章で解説する手順)、READMEにプロジェクト説明や担当一覧を記載した。

【画像:社内報用リポジトリのREADME例】

記事執筆

記事担当者は各自の記事をMarkdownファイルで作成。2023-11-Newsletter/ のように発行号ごとのフォルダを作り、その中に article-タイトル.md を執筆してコミット。画像担当者は画像ファイルを同じフォルダにアップロードし、記事中にリンク挿入(Markdownで画像を貼る)するよう連携した。

【画像:フォルダ構成とMarkdownファイルの例】

レビューと修正

校正担当者はGitHub上で記事のMarkdownファイルを開き、誤字などを見つけた場合は直接編集してコミットした。コミットメッセージには「誤字修正」「表現調整」など理由を記載。あるいは内容について質問がある場合はIssueを作成し、該当記事担当をメンション(@ユーザ名)して指摘事項を共有した。記事担当者はIssueの指摘に対応して記事を修正し、修正コミットをプッシュ。Issue上で「対応しました」とコメントし、校正者が確認後Issueをクローズ(完了)した。

【画像:Issueでの指摘と対応の例】

最終承認

編集長は各記事ファイルの最終版を確認。必要があればさらなる修正を加えつつ(コミットログが蓄積されていく)、問題なければその号の完成版としてPDF化などの処理へ進んだ。すべての記事が確定した段階で、リポジトリにタグ(例えば v2023-11 など)を付けてリリース版の目印とした。

【画像:リリースタグの作成画面】

アーカイブと次号準備

発行後は、そのまま履歴が残るので誰でも変更履歴を遡れる状態に。次号に向けてまた新しいフォルダを作り、執筆を開始。過去の号のフォルダがアーカイブとしてリポジトリに蓄積されていく。

メリット

このような流れで進めると、メールで添付ファイルをやり取りしていた頃に比べて大幅に効率化できます。特に、誰がどこを直したかが明確になるため、「どの版でこの文章が変わったのか?」といった問いにも即座に答えられます。また、Issueによる指摘管理のおかげで、見落としや言った言わないのトラブルも防止できます。GitHub上で完結することでメンバー全員が常に最新状態を把握でき、過去の経緯も共有資産として残ります。

他の業務への応用例

議事録の共同編集

複数人で議事録を確認・編集し、承認フローを経て確定させるプロセスを管理できます。

規程類の管理

社内規程や業務マニュアルの更新履歴を厳格に管理し、誰がいつどのように変更したかを記録します。

プレゼン資料の更新管理

提案資料やプレゼンテーションの各バージョンを追跡し、クライアントからのフィードバックを反映する過程を記録できます。

GitHubを「履歴が残る共有フォルダ」と考える

GitHubは単なるファイル置き場ではなく、「誰が」「いつ」「何を」「どのように」変更したかの記録が自動的に残るシステムです。この特性を活かし、チームの協働基盤として活用しましょう。

あなたの業務に当てはめてみる

ぜひ皆さんの業務にも置き換えて活用イメージを膨らませてみてください。どんな文書作成や情報共有のプロセスも、GitHubを使えば透明性と効率性が高まります。

演習課題

  1. 第2章で作成したリポジトリに、適当なテキストファイルを1つ新規作成する
  2. 内容をいくつか編集してコミットを複数回行う
  3. 「History」(履歴)機能でコミット履歴を確認し、各コミットで何が変更されたかを確認する
  4. コミットメッセージを意識して書く練習をする(例:「〇〇を追加」「△△を修正」など)

【画像:演習課題の実施例(コミット履歴画面)】