3. 具体的な日常業務の例(プロジェクト進捗管理)

実際の業務でIssueを使う例として、プロジェクト進捗管理への活用シナリオを紹介します。ここではマーケティング部門がイベント準備プロジェクトを進めるケースを想定します。

シナリオ: イベント準備プロジェクトのIssue管理

マーケティングチーム5名で自社開催イベントを1ヶ月後に控えています。やることが多数あるので、GitHubでタスク管理することにしました。プロジェクト専用のリポジトリ「event-2024」上でIssue管理します。

【画像: プロジェクト管理に使用するIssue一覧画面】

プロジェクト進捗管理の流れ

タスクリストの作成

プロジェクトリーダーがイベント準備の全タスクを洗い出し、それぞれIssueを作成します。例:「会場手配」「招待客リスト作成」「告知ページ作成」「配布資料デザイン」「当日スタッフ打合せ」など。

【画像: タスクリストとして作成されたIssue一覧】

各Issueには担当者(Assignee)と目標完了日を設定し、priority: high など重要度のラベルも付けます。

進捗共有

チームは週2回の進捗ミーティングを設定。その際、プロジェクトリーダーはGitHubのIssue一覧を表示し、Open(未完了)のIssueを上から順に確認します。

担当者は各Issueの最新状況を口頭&Issueコメントで報告します。例えば「会場手配」は担当者がコメントに「○月○日に会場予約完了。会場からの連絡待ち事項あり」と記載し、関連資料を添付。全員がリアルタイムでIssueを参照しながら会議を進めます。

課題の発見と対策

Issue一覧に締切が近づいているものには自動的に赤いマークが付き、遅延リスクが可視化されます。例えば「配布資料デザイン」のIssueに遅れが出そうだと判明。

そこでリーダーは急遽デザイン課のメンバーをAssigneeに追加し応援を依頼。Issueコメントで「スケジュール厳しいため○○さんにデザイン支援いただくことになりました」と共有し、関連ファイルを添付。関係者全員に通知が飛び、すぐ情報共有できました。

【画像: 課題対応のやり取りが記録されたIssueコメント画面】

クロージング

各タスクが完了するごとに担当者はIssueをCloseしていきます。イベント前日にはほぼ全てのIssueがCloseされ、「残件ゼロ」であることをチーム全員で確認しました。

イベント当日に想定外の問題が起きた場合も、後日「振り返り」としてIssue化する計画を立て、ナレッジ蓄積に備えました。

プロジェクト終了後

イベント終了後、プロジェクトリーダーはClose済みIssueも含めて全てに目を通し、得られた教訓をまとめて社内Wikiに記載しました。Issueのやり取り履歴があったおかげで、プロジェクトの流れを思い出しながら整理するのが容易でした。

また、似た将来プロジェクトの参考にするため、このリポジトリ自体をアーカイブせず残しておくことにしました。新メンバーには「過去のevent-2024リポジトリを読んでおくと流れがわかるよ」と案内できます。

Issueを使った進捗管理の利点

この例でわかるように、Issueを使った進捗管理には次の利点があります:

  • タスクが網羅的に見える:プロジェクト全体のタスクが一覧表示され、抜け漏れを防げます
  • ステータスが誰でも把握できる:チーム全員がリアルタイムで進捗状況を確認できます
  • 遅延やブロッカーの早期発見:問題が可視化され、早めに対策を打てます
  • コミュニケーション履歴が残る:すべての議論や決定事項が記録され、将来の資産になります

これらは従来のメールベース・エクセルベースの管理にはない強みです。

他のプロジェクト管理ツールとの比較

プロジェクト管理ツールは他にもTrelloやJiraなど色々ありますが、GitHub IssuesはGitHub上で他の機能(コミットやPR)と連携しながら使える点で一体感があります。小規模なプロジェクトであれば十分な機能性です。必要に応じて第8章で述べるような外部ツール連携も検討しつつ、まずはGitHub標準のIssue機能を試してみてください。

演習課題

自分の管轄する業務から3つ、やるべきタスクを洗い出してIssueを作成してみましょう。それぞれに担当者(自分でOK)と期限、ラベルを設定し、コメント欄に詳細やチェックリストを書き込んでみてください。

Issue一覧画面でそれらが見やすく整理されていることを確認しましょう。また、一つのIssueに友人や同僚をAssigneeとして招待し、コメントでやり取りするテストをしてみましょう。

イシュー活用のチェックポイント

Issuesを使ったプロジェクト進捗管理を成功させるためのポイントは、以下の点に注意することです:

  • すべてのタスクをIssueとして明文化する
  • 担当者と期限を必ず設定する
  • 進捗や状況変化は必ずIssueにコメントで記録する
  • 定期的に全Issue一覧を確認して進捗と課題を把握する
  • 完了したIssueは確実にCloseする