1. よくある疑問点へのQ&A形式での回答
GitHubを業務に導入しようとすると、社内から様々な疑問の声が上がることがあります。ここではその中でも特によくある質問と、その答えをQ&A形式でまとめます。
Q1. 今までメールやExcelで管理していたものをGitHubに変えるメリットは?
回答:一言で言えば、情報の一元管理と履歴管理が飛躍的に向上する点です。
メールは個人の受信箱に閉じてしまい他人が参照しにくいですが、GitHub Issueで議論すれば誰でも経緯を追えます。Excelのタスクリストはリアルタイム性に欠けますが、GitHub IssueやProjectなら更新のたびに通知が届き最新が共有されます。
変更履歴が全て残るので「誰がいつ何をしたか」が透明化され、責任の所在も明確になります。また、将来の別プロジェクトの参考にもなり、知見が組織に蓄積されます。要は「チームの共有脳」を作ることができるのです。
Q2. 非エンジニアなのでGitHubの画面が難しそう。習得に時間がかかるのでは?
回答:確かにエンジニア向けのUI部分もありますが、本サイトで紹介している基本操作(Issue作成、ファイル編集、プルリク承認など)は、WordやExcelの操作と大きく変わりません。
実際、技術に詳しくない職種の方でも、実物を触りながら覚えれば数日で十分使いこなせるようになります。もし心配であれば、最初は小さなチームで試験導入し、使い方ガイドを整備してから全体展開すると良いでしょう。
あるいは、エンジニアが非エンジニアに教えるワークショップを開くのも効果的です。
一度「便利だ」と実感すれば、あとは自発的に習得が進むケースが多いです。
Q3. セキュリティは大丈夫? 社内機密情報をクラウドに置くのは不安。
回答:セキュリティは多くの企業が懸念するポイントです。しかしGitHubはMicrosoft傘下で大規模に運用されており、セキュリティ水準は非常に高いです。データセンターの安全管理や通信の暗号化は万全ですし、2要素認証による不正ログイン対策もあります。
もちろん「絶対安全」とは言い切れませんが、それは社内サーバでも同じこと。重要なのは適切なアクセス制御と社員教育です。リポジトリをプライベートに保ち、招待制にすれば外部漏洩リスクは最小限です。
加えて、情報漏洩事故の多くは人的ミス(誤送信など)によるものですが、GitHubなら送信先を間違えるといったことも起きにくいです。どうしてもクラウドが心配なら、GitHub Enterpriseで社内ホストする選択もあります。
実際は、メールで添付ファイルをやり取りする方がよほどリスクが高いとも言われます。GitHub導入前に、IT部門や情報セキュリティ部門と連携し、社内規程に沿った利用方法を確認しておきましょう。
Q4. GitHubを導入すると、IT部門の管理負担が増えますか?
回答:適切に運用すれば、むしろIT部門の負担軽減に繋がる場合もあります。例えば、今までファイルサーバやExcelで行っていたアクセス権設定やバックアップ作業が、GitHubなら自動でやってくれます。
GitHubの管理者はユーザの招待/削除とリポジトリ権限の管理が主業務になりますが、これは従来のファイルサーバ管理と大差ありません。クラウドサービスなので、サーバメンテやアップデート対応などのインフラ作業は不要です。
むしろIT部門は、GitHubというプラットフォームを使って業務改善や効率化の支援に注力できるようになるでしょう。
もちろん、社員からの使い方問い合わせには対応する必要がありますが、本サイトのような社内マニュアルを用意したり、エバンジェリストを育成すれば回避できます。
Q5. ドキュメントをMarkdownで書くのに抵抗があります。Wordは使えないの?
回答:GitHub上でもWordファイル(.docx)をそのまま扱うことは可能です。アップロードすればバージョン管理されますし、プルリクエストで差分が見えない以外は基本的に問題ありません。
ただ、前述のとおり差分がテキストで見えないのでレビューしづらいという欠点はあります。そこで段階的にMarkdown等へ移行することをお勧めします。
初めはWord/PDFをそのままGitHubで管理し、履歴管理やIssueだけ活用する。そして徐々に、編集容易なMarkdownに置き換えられる部分は置き換えていく、という方法です。
最近は簡易なMarkdownエディタやプレビューもありますし、GitHub自体がMarkdownをHTMLにレンダリングしてくれますので、慣れるとWordより軽快に扱えるようになります。
どうしてもWordが必要なフロー(例えば捺印が必要な契約書)は例外的に扱いつつ、テキスト情報は極力Markdownやテキストベースで共有する、という使い分けが現実解でしょう。
Q6. 社員全員がGitHubアカウントを作成する必要がありますか?コストは?
回答:基本的には共同作業するメンバーは各自GitHubアカウント(無料)を持つ必要があります。ただ閲覧だけなら、例えばWikiをPDF出力して配布するなどアカウントなしで情報共有することも可能です。
コスト面では、GitHub Freeであればユーザ数無制限・プライベートリポジトリ無制限なので追加費用はかかりません。むしろメールサーバやファイルサーバ維持費が減る可能性もあります。
有料プランにする場面としては、より高度な権限管理やシングルサインオンを導入する場合くらいです。中小規模なら無料枠で十分でしょう。
もちろん社内規定で無料クラウド利用に制限がある場合は、正式にEnterprise契約する必要があるかもしれませんが、その費用対効果は試験運用段階で検証すると良いでしょう。
導入推進のポイント
GitHubの導入を社内で進める際は、こうした疑問に対して具体的で明確な回答を準備しておくことが重要です。不安や懸念を丁寧に解消することで、スムーズな導入が実現できます。また、小さな成功事例を作り、そこから徐々に広げていく段階的アプローチも効果的です。