3. GitHubでできること・できないこと
GitHubは多機能なプラットフォームですが、全てのビジネスニーズに対応できるわけではありません。ここでは、非エンジニアのビジネスパーソンがGitHubを活用する際の「できること」と「できないこと・向いていないこと」を整理します。
GitHubでできること(非エンジニア向け活用法)
ドキュメント管理・共同編集
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マニュアル・手順書の管理
社内マニュアルやトレーニング資料などをMarkdown形式で作成・管理できます。変更履歴が自動的に残り、いつでも過去版を参照可能です。
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知識ベースの構築
チームの知識やベストプラクティスをWiki形式でまとめられます。複数メンバーが共同編集でき、常に最新情報を維持しやすくなります。
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提案書・企画書の作成と承認フロー
企画書や提案書をGitHub上で作成し、プルリクエストを使って上司や関係者のレビュー・承認を得るワークフローが実現できます。
プロジェクト・タスク管理
- プロジェクト進行状況の可視化: GitHub Projectsを使って、カンバンボード形式でタスクの進捗管理ができます。「未着手」「進行中」「完了」などのステータス管理が視覚的に行えます。
- 課題管理と議論: Issuesを使って、検討事項や問題点を記録し、関係者と議論できます。スレッド形式で会話が記録されるため、経緯が残ります。
- マイルストーン管理: プロジェクトの重要な節目をマイルストーンとして設定し、関連するタスクをグループ化して進捗を追跡できます。
情報共有・コラボレーション
- アイデア出しと共同ブレインストーミング: Discussions機能を使って、チーム内でアイデア出しや質問・回答を行えます。これはSlackなどのチャットより構造化された討論が可能です。
- ナレッジシェアリング: 「この問題はこう解決した」といった知見を記録し、チーム内で共有・蓄積できます。過去の解決策を参照しやすくなります。
- オンボーディング資料の整備: 新メンバー向けの資料をGitHub上で管理することで、最新情報へのアクセスが容易になり、入社時の情報提供がスムーズになります。
GitHubに向いていないこと・代替ツールを検討すべきケース
一般的な文書作成・編集作業
- 複雑なフォーマット文書: 複雑な書式設定や表、グラフを多用する文書は、Microsoft Word や Google Docsなどの方が適しています。GitHubでは主にMarkdown形式での文書作成となり、デザイン面での表現が限られます。
- 大量のグラフィカル要素が必要な資料: プレゼンテーション資料や視覚的な要素が多い文書は、PowerPointやDesignツールなどの専用ソフトの方が向いています。
- リアルタイム共同編集: 複数人で同時に一つの文書を編集するようなケースでは、Google DocsやOffice 365などのリアルタイム共同編集機能を持つツールの方が適しています。GitHubは変更を順次コミットする形式のため、同時編集には向いていません。
特定の専門業務
- 複雑な計算や表計算: データ分析や財務計算などは、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトが適しています。
- 顧客情報や営業案件の管理: 顧客関係管理(CRM)は、Salesforceなどの専用CRMツールが適しています。GitHubはこうした構造化データの管理には向いていません。
- 大容量バイナリファイルの管理: 画像、動画、音声などの大きなファイルの管理には、GoogleドライブやDropboxなどのクラウドストレージが適しています。GitHubはテキストベースのファイル管理に特化しています。
コミュニケーション用途
- リアルタイムでのチャット・会話: 即時的なコミュニケーションには、SlackやTeamsなどのチャットツールが適しています。GitHubのDiscussionsやIssuesは非同期コミュニケーション向けです。
- ビデオ会議や音声通話: オンラインミーティングには、ZoomやGoogle Meetなどのビデオ会議ツールが必要です。
- インフォーマルな情報共有: 雑談や気軽な情報共有には、SlackやTeamsのようなカジュアルなコミュニケーションツールが向いています。
選択のポイント
GitHubは「変更履歴を残しながら文書やコードを管理し、非同期でレビュー・協働する」場面で真価を発揮します。一方、リアルタイム編集や複雑なフォーマット、大容量ファイル管理には不向きです。目的に合わせて最適なツールを選びましょう。
他のツールとの連携・補完関係
GitHubは単独で使うだけでなく、他のビジネスツールと組み合わせることで効果を最大化できます。効果的な統合ワークフローの構築例を見てみましょう:
ドキュメント作成と共有
MarkdownエディタでドキュメントをローカルPC上で作成し、GitHubにプッシュして共有。Slack連携によって、更新があったらチーム全体に通知が届きます。特にTyporaやVS Codeなどの高機能エディタとの組み合わせが効果的です。
タスク・プロジェクト管理
Trello/AsanaでGitHubのIssuesやプルリクエストと連携させ、タスク管理とコード変更を一元化。進捗状況が自動的に更新され、ステータスが視覚的に把握できます。GitHub Projectsとの二重管理を防ぎ、効率化が図れます。
自動化プロセス
GitHub Actionsを使って、ドキュメントがコミットされたら自動的にPDF生成やサイト公開を実行。人間の手作業を減らし、常に最新版が公開される仕組みを構築できます。特に定期的な更新が必要な文書に有効です。
コミュニケーション連携
Microsoft TeamsやSlackとGitHubを連携させ、重要な変更やコメント、レビューリクエストなどをチャットで通知。迅速な対応が可能になり、チームの反応速度が向上します。リアルタイムコミュニケーションとGitHubの非同期作業が融合します。
GitHubと相性の良いツール
- Slack/Teams: GitHubの変更通知をSlackに連携させることで、リポジトリの更新をチャットで通知できます。
- Trello/Asana: より高度なタスク管理機能を持つツールとGitHubを連携させ、タスクとコード変更を紐づけられます。
- Markdown編集ツール: VS Code, Typora, Obsidianなどの高機能Markdownエディタを使えば、より快適にGitHubのドキュメント編集が可能です。
- CI/CDツール: GitHub Actionsを使って、ドキュメント更新時に自動的にPDF生成やサイト公開などの処理を自動化できます。
ツール選択の判断基準
変更履歴が重要なケース
「誰が何をいつ変更したか」の記録が必要なドキュメントはGitHubが最適です。特に監査が必要な文書や、変更理由の説明が重要な文書に向いています。
リアルタイム編集が必要なケース
複数人で同時に編集したり即時反映が必要な場合は、Google DocsやOffice 365が適しています。会議中の共同編集やブレインストーミングに向いています。
複雑な書式が必要なケース
高度なフォーマットや図表を多用する資料は、専用アプリケーション(Word, InDesignなど)を選びましょう。見た目の完成度が求められる顧客向け資料などに適しています。
承認フローが必要なケース
企画書や提案書など、正式な承認プロセスが必要な文書はGitHubのプルリクエストを活用すると、変更提案と承認フローを一元管理できます。
GitHubの限界を理解する
GitHubはパワフルなツールですが、以下の点に注意する必要があります:
学習曲線の存在
特に最初は用語や概念が難しく感じることがあります。チーム全体の導入には教育コストがかかるため、段階的な導入を計画することが重要です。オーバーエンジニアリングのリスク
単純な用途にGitHubを使うと、かえって複雑になる場合があります。適材適所で使い、必要以上に複雑化しないようにしましょう。セキュリティ配慮の必要性
企業の機密情報をGitHubで管理する場合、プライベートリポジトリの設定や、アクセス権限の適切な管理が必須です。特に公開範囲には注意が必要です。非テキストファイルの扱い
画像や動画などのバイナリファイルは変更履歴が視覚的に確認しづらく、容量も大きくなりがちです。これらのファイルタイプには特に注意が必要です。
ベストプラクティス
GitHubは「すべてを置き換える」ツールではなく、既存のワークフローを補完・強化するものとして位置づけるとスムーズに導入できます。既存のツールと併用しながら、GitHubの強みを活かせる部分から少しずつ取り入れていくアプローチがおすすめです。